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1-3. この世界は、つまり

「見てみろ。」

その言葉に、涙と鼻水まみれのまま、顔を上げた。
本部長代理が示す方向に目をやると……

さっきまで砂ばかりだった景色の一角に、草木が繁っていた。

「オアシス?」
「そうだな。」

オアシスを眺めていた本部長代理が、こちらを軽く睨む。

「お前、ずいぶん泣いてなかったんだろ。」
「はぇ。」

気合の入らない情けない声が出た。
思い返すと、確かにこのところ、しんどかった割に泣いた記憶はない。
が、それとオアシスに関係が、ある?

「察するに……
 大地が砂漠に成り果てるくらいに心身ともに疲弊しているが、
 それは自分が望んでやったことだから空は曇りなく澄み渡り、
 やり遂げて満足しているから爽やかな風も吹く。
 泣くことを思い出したから、少しだけ大地に潤いが出た。
 そんなところか。」

まるでそれでは、この目に見える景色は私の……

「お前の心身の有り様が可視化されたのが、この景色であり、世界だな。」

なんてこったい。異世界的な、アレですか?

next. 「異世界とはちょっと違うよな。」