「見てみろ。」
その言葉に、涙と鼻水まみれのまま、顔を上げた。
本部長代理が示す方向に目をやると……
さっきまで砂ばかりだった景色の一角に、草木が繁っていた。
「オアシス?」
「そうだな。」
オアシスを眺めていた本部長代理が、こちらを軽く睨む。
「お前、ずいぶん泣いてなかったんだろ。」
「はぇ。」
気合の入らない情けない声が出た。
思い返すと、確かにこのところ、しんどかった割に泣いた記憶はない。
が、それとオアシスに関係が、ある?
「察するに……
大地が砂漠に成り果てるくらいに心身ともに疲弊しているが、
それは自分が望んでやったことだから空は曇りなく澄み渡り、
やり遂げて満足しているから爽やかな風も吹く。
泣くことを思い出したから、少しだけ大地に潤いが出た。
そんなところか。」
まるでそれでは、この目に見える景色は私の……
「お前の心身の有り様が可視化されたのが、この景色であり、世界だな。」
なんてこったい。異世界的な、アレですか?