「は!? カエル!?」
思わず言葉が出る。
私の言葉に、カエルはこちらの顔をじっと見た。
「お前には、俺がカエルに見えるんだな。」
カエル以外の何者にも見えないけれども。
いやでも、カエルは喋らないな。イケオジ風に、シャツは着こなさないわな。
「俺を見て、誰かを思い出さないか?」
カエル? カエルに知り合いはいない……
が、ふと思い出した。いや、こんなカエルではないけれど。
ある日、出社したら机の上に置いてあったカエルのぬいぐるみ。
あれは仕事で大炎上したときに、お客様からだ、と上司から差し入れて頂いたもので……
「本部長……?」
「の、代理だろうな。言うなれば。」
そう聞いた瞬間、どばっと涙が溢れた。
すみませんでした、ごめんなさい、の言葉と、
それに伴うどうしようもない取り返しのつかなさに胸が千切れるような感傷と、
それでも充実してたあの日々が胸にあふれる。
カエルは……本部長代理は暫くの間、何を言うでもなく、ただそこに佇んでいた。